茶色い卵
確か、父は必ず「ヨード卵光」を買っていた。毎日ご飯がなくてお菓子やマックばかりの偏食の幼き私に「少しでも栄養のある方にしよう」と思って選んでくれていたのだろう。
ウチは父と2人の時代もあり、
毎日ご飯代が置かれていた。
今のように「子ども食堂」があったら
もう少し、私の背は伸びていたかも知れない。
あの茶色い卵を見ると、亡き父を思い出す。
あれはあの人なりの愛情だったのだ。
ナチュラルハウスで6個入りの卵を10年ぶりに買い、割れないように気遣いながら
電車に乗る。
赤ちゃんを抱いて満員電車に乗るのはきっと
こんな感覚かも知れないと思いながら帰宅。
1つ1つ殻を割るのが新鮮で、もはや卵がおかずの足しではなくて、メインディッシュになる。
目玉焼きが焼ける「ジュワー」という音と匂いが
なんだかとても愛おしく感じる1週間だった。
もうしばらく卵を買うことはないだろう。
お父さん、ありがとう。