いいちこ
いいちこのポスターを見ると
亡き父を思い出す。
父は「いいちこ」のポスターが好きだった。
「駅員さんにポスターが欲しいと願い出ても
ダメだった」と切なそうに言うものだから
本社に問い合わせたことがある。
やはり人気があるようで断られたのだけど、
今までポスターに使われた写真が小さく
掲載された写真集が届いた。
もう嬉しくて嬉しくて。
父の誕生日にプレゼントすることが叶った。
1ページ目の真っ白な紙に
「おめでとう」の言葉と
「どの写真が好きか家族みんなで見ながら
話して欲しい」と記した。
アル中のせいで、ウチの家族は壊れていたから
何か話すきっかけになればと思った。
父の死後、荷物を整理していたら
写真集が出てきた。
きっと話し合うことは出来なかったのだろう。
たった2枚のふせんがお気に入りのページに
貼ってあって、切なさと嬉しさで泣けた。
そのふせんは貼ったまま、
今は私が持っている。
いいちこのポスターを見ると、
胸の奥に風が吹く。
「これもすてきだね」って見せたくなるんだ。